1.超音波とは
国語辞典を引くと「超音波とは周波数が2万ヘルツ以上の、人間の耳には音として聞こえない周波数をもつ音波」とあります。
ところで、超音波の応用は、内臓の診断から魚群探知、金属探傷、超音波加工まで多岐にわたり、超音波流量計では 1MHz 程度の周波数を用いますが、超音波応用機器の中には20kHz以下の周波数を使うものもあるため、「音としての利用を意図しない音波はすべて超音波」と定義されています。
2.動作原理
超音波流量計は、1960年代に実用化されましたが、いくつかの異なる動作原理の製品があり、その特性もまた異なります。現在は、超音波を流れの上流側と下流側から交互に打ち込み、超音波の伝播時間の差を測る時間差式が主流です。
この動作原理は、図1に示すように、川の流れと船の速度の例で考えると容易に理解できます。対水速度が一定でA→B→Aと往復する船は、A→B間は川の流れに押されて早く対岸に到着し、B→A間は流れに逆らい遅く到着します。この時間差から川の流速を知ることができます。
超音波は物質を透過して伝播するため、送受波器を流体導管の外側に取り付けて、内部流体の流速を測ることができます。この形式はクランプオン型と呼ばれ、とくに大口径管の流量を経済的に測る方法としてよく用いられます。これに対し、送受波器が管内に直接開口する形式は接液型と呼ばれます。
測定精度を高めるため、超音波の道筋(測線)を複数にしたり(図2)、管内で反射させた製品があります。精度はよくなりますが、当然製造コストも上がります。
超音波流量計は超音波を斜めに打ち込むため、小口径になるほど設計が難しく、以前は口径300mmあたりが下限といわれていました。最近では、図3に見られるようなU字型管路を用い、4mmの小口径用も作られるようになりました。
主な測定対象はごみや気泡の少ない液体ですが、気体や蒸気が測れる製品もあります。ただし、気体用・蒸気用はすべて接液型です。
時間差式は精度はよいのですが、超音波の道筋にごみや気泡があると測定できません。これと対照的に、ごみや気泡を積極的に利用するのがドップラー効果による流量計です。
ドップラー効果とは、音の発生源が観測者に対して近づいたり遠ざかったりしたとき、見かけ上音波の周波数が変化する現象で、実例として踏切で聞く列車の汽笛がよく挙げられます。
ドップラー式超音波流量計の動作原理については図4をご参照ください。超音波を液中のごみや気泡に当て、反射波の周波数変化から流速を測定します。
3.超音波流量計の特性
超音波流量計が優れているのは次に挙げるポイントです。ただし、時間差法超音波流量計を念頭においています。
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管内に障害物がない
管内に流れを妨げるものがまったくありません。これに伴い、次の特長が生じます。
- 圧力損失ゼロ(ただし小口径は管路を曲げるため圧損あり)
- 構造が簡単で、故障しにくい
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管路が清浄
U字管タイプのように、管壁の外側に送受波器を取り付ければ、流体とは完全に非接触で測定できます。
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密度・粘度の影響を受けない
超音波流量計の流量信号は体積流量に直線的に比例し、原理上密度や粘度の影響を受けません。
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測定できる流量範囲が広い
超音波流量計のフルスケール流量は、変換器側で自由にその設定を変えられます。流量信号はゼロ付近まで出ますから、1つの流量計で広い流量範囲にわたって測定ができます。
口径も、大は数mから小は4mmまで、広い範囲で作られています。
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高精度
接液型超音波流量計の精度は、フルスケールの1~2%程度といわれていましたが、最近は技術の向上により指示値の0.5%までできるようになりました。測線の数を増やし、より高精度化した製品もあります。
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応答が速い
質量や熱容量が介在しないので、流量変化に素早く追従できます。脈動流にも追従可能です。
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逆方向の測定が可能
構造が上下流対称なので、逆方向の流れも測定できます。
以上並べてみると、前号の電磁流量計の特長によく似ていますが、超音波流量計は「導電性の液体」以外の流体も測定できます。では、すべての面で電磁流量計より勝っているかというと、次のような弱点もあります。
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直管部が必要
差圧式流量計と同様、流量計の上流側に口径の10倍、下流側に5倍程度、配管状況によってはさらに長い直管部を必要とします(詳細は私の運営する計装プラザ http://www.ksplz.info/)。測線を増やせば、直管長は短くできますがコストが上ります。
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気泡に弱い
液体中の気泡は超音波の通り道を遮断します。わずかの気泡で動作停止するのが超音波流量計の最大の弱点でした。しかし最近は、信号処理に工夫をこらし、気泡の影響を受けにくい製品も現れました。
クランプオン型は、上記のほか、次に挙げる特長をもっています。
- 大口径でもコスト一定
- 流体と完全に非接触
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流れを止めずに修理可能
ただし、配管の肉厚推定や超音波の屈折など誤差要因は増えます。そのため、測定精度はよくてもフルスケールの2~3%止まりです。
ドップラー式はごみや気泡を積極的に利用しますが、測定精度はフルスケールの5~10%程度です。
4.応用分野の広がり
クランプオン型は、コスト面の優位性を活かし、すでに大口径電磁流量計の市場を奪いました。
管内の清浄を阻害しないことが半導体製造業に歓迎され、超純水や特殊薬液の計測に使われています。また、食品や薬品を測る流量計としても用いられています。
精度の悪いドップラー式も、排水路など環境計測に役立っています。海外では高精度の超音波流量計が、ガスパイプラインで多く使われているそうです。
計装プラザには、微小流量や高速応答など、特色ある製品が紹介されています。
かつて「値段が高く、使い方が難しい製品」と見られていた超音波流量計ですが、電子技術の発達による価格低減に伴い、今後ますます汎用流量計として手軽に利用されるようになるでしょう。
著者:佐鳥 聡夫 (有)計装プラザ 代表取締役/技術士(機械、電気・電子部門)