流量計のトラブル

1.郵便ポストが赤いのも・・

一昔前、♪電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも、みーんな私が悪いのよ♪という戯れ歌がありましたが、流量計の場合も罪も無いのに責められることが多いのです。

ことに利害が絡む取引用流量計は鬼門です。流量計測の国際シンポジウムで、講演者が「高精度流量計測は、2度続けてやってはいけない」と述べたときは満場爆笑でした。出席者は皆、この種のトラブルを経験した人達だったからでしょう。

そこで今回は、流量計のトラブルのお話です。ただし、単純な故障や誤配線によるトラブルではなく、流量計は悪くないのに、あたかもそれが原因のように見られる例を取り上げます。

2.トラブルの症状と主な原因

「流量計がおかしい」と言われる場合の症状を類別し、それぞれの主な原因を表1にまとめました。

以下、トラブルの原因について解説を加えます。

  1. 管路中の異物
    比較的起こりやすいトラブルは、流体中に含まれている重い成分の分離、あるいは塩類の析出凝固により管壁が覆われる場合です。樹脂など粘着性のある物質が管壁に付着することもあります。誤差が次第に増える場合は、まずこの可能性を検討してください。
    地熱発電所で使われていた差圧式流量計のトラブルでは、蒸気に含まれている不純物が管内壁に厚い層として付着していました。付着物がオリフィスの孔をほとんど覆い隠し、精度はまったく問題外という状態でした。
    電磁流量計は、電極が樹脂など絶縁物で覆われると動作しません。このようなアプリケーションには、電極が管内壁に露出していない容量型電極の電磁流量計が威力を発揮します。
    プラント建設が盛んだった時代は、工事中に置き忘れたボルトナットや手袋が配管内を流れてくる事故がよくありました!

  2. 部品の磨耗
    可動部品の磨耗より、オリフィス孔のエッジや渦発生体のエッジなど、精度に直接影響する部分の磨耗が問題です。研磨性粒子を含むスラリーの流量測定に使われていた渦流量計を分解点検したところ、エッジの磨耗だけでなく、渦の当たる管内壁部分が深く抉られていて、驚いたことがあります。

  3. 設置環境

    電子回路を内蔵する流量計の場合には、周囲の電気的ノイズに注意を払ってください。ノイズの発生源は電磁リレー、ソレノイドコイル、インバータなど様々です。
    流速分布の影響を受ける流量計の場合には、流量計前後の直管部が重要です。狭いスペースに直管部を確保するため、図1に示すような配管を見たことがあります。二平面にまたがるエルボーは強い旋回流を作り出し、タービンメータに大きな誤差を生じさせます。

    気泡が溜まりやすい配管(図2)やごみが溜まりやすい配管(図3)も要注意です。

  4. 関連機器
    流量計と組み合わせる関連機器も往々にしてトラブルの原因になります。オリフィスに開平演算機能付の差圧発信器を使っているのに、受信計器側でまた開平演算を行ったり、温度圧力補正器やパルススケーラーの設定を間違えるなどのミスはよく見られます。
    保守点検用のバイパス弁に漏れが生じていたこともあります。バイパス弁が漏れれば、流れの一部が分流するため、流量計には当然マイナス誤差が生じます。

  5. 仕様不適合
    仕様決定時に想定していた流体条件が実際と大きく異なるため、トラブルになることもあります。液体の粘度・密度、また気体の温度・圧力を再度確認してください。将来の需要拡大を見込んで大容量の流量計を選定し、使用開始時の流量が少なすぎるという事例もあります。
    特異な測定対象の場合には、流量計との相性に注意を払う必要があります。たとえば水素ガスには低密度・高熱伝達率という性質があり、面積式流量計で計る際は加圧し、熱式流量計で計る際は流速を制限する必要があります。

  6. 誤差検証方法の誤り
    新しい流量計が入ると、それまで使っていた流量計やレベル計と比較することが多いのですが、実はそちらの方が狂っているケースは珍しくありません。
    現場で正確な校正作業を行うのは、基準器の選定からして難しいことなのです。臨時に寄せ集めた機器のどれかが不具合だったり、基準器の精度が足りなかったり、誤差が入る可能性はいろいろとあります。

  7. 不思議なトラブル
    以上のほか、一見「どう考えても分からない」トラブルもあります。私は以前「バルブを絞ると流量が増える」とか「魚が遊ぶ流量計」などいくつかの事例を、月刊誌「計装」に「フィールド計器の不思議なトラブルシューティング」と題して執筆しました。「計装プラザ」http://www.ksplz.info/ にPDFファイルがありますから、ご興味のある方はご覧ください。
    先日、ある読者から「面積式の最大口径は150mmとあるが、もっと大きな製品もある。また上流側に直管部が必要」とのコメントが寄せられました。たしかに大口径の面積式流量計は存在しますし、垂直流入型で面間距離が短い(テーパー比の大きい)場合には直管部を必要とするケースもあります。
    しかし、あまり細かい話をすると「木を見て森を見ぬ」方向へ読者を導く恐れがあるため、特殊な例は切り捨てました。流量計の世界は複雑多岐で、高粘度流体用タービンメータやベアリングレス羽根車流量計など、原則から外れた製品も存在します。

この連載を始める前は「やれやれ、この先一年間毎月原稿の締切りに追われるのか」と気が重くなりましたが、月日の経つのはまことに早く、気が付けばもう最終回です。毎月、拙文にお付合いくださった皆様に感謝いたします。

今後とも流量計のことで何か疑問がございましたら、(有)計装プラザ、佐鳥宛にお気軽にご相談ください。

著者:佐鳥 聡夫 (有)計装プラザ 代表取締役/技術士(機械、電気・電子部門)

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