1.名前の由来
今回から具体的な流量計の話に入ります。まず、いたる所で見かける差圧式流量計から始めましょう。
名前の由来は、絞り機構の前後の差圧(Differential Pressure)を利用することから来ています。絞り機構としてはオリフィスプレートが一般的なので、オリフィス流量計とも呼ばれています。
2.動作原理
図1に示すように、管の途中で流れが絞られると、流体の圧力が下がります。下がる程度は流体密度と流速に関係するので、上流側と下流側の圧力差を測れば流量が分かります。この流量は体積流量であり、質量流量を知りたい場合はこれに密度を掛けて求めます。気体は、温度と圧力によってその体積が大きく変化するため、標準状態(0℃、1気圧)における体積流量 Nm3 ※)/h に換算して表示するのが一般的です。
※ノーマル立方メートル、慣用的には「ノーマル・リューベ」ということが多い。
流量と差圧の関係はリニアでなく、自乗特性です。つまり、流量が2倍に増えると差圧は4倍になります。リニアな流量信号を得るには、差圧信号を開平しなければなりません。
温度・圧力補正システムを含むシステム構成例を図2に示します。
三岐弁(三箇所弁)は流れを止めずに、差圧伝送器のゼロ点調整を行うために必要です。オリフィス前後の直管部は流速分布の偏りや旋回流を減少させ、測定条件を一定にします。
図2に示したシステムは比較的複雑な例です。最も簡単なシステムは、開平演算器を内蔵した差圧伝送器と絞り機構だけから構成されます。

3.差圧式流量計の特長
歴史的に最も古い差圧式が、いまだに流量計の形式別シェアで首位を占めているのは、差圧式流量計に次のような特長があるからです。
1)広い適用範囲
液体、気体、蒸気はもちろん、工夫によってはスラリーも測れ、また小流量から大流量まで測れます。
2)構造が簡単で低価格
可動部がないため故障しにくく、オリフィスプレートは安価です。
3)実流校正が不要
流量計は出荷前に流体(通常は水または空気)を流し、流量対出力の関係を調べる校正作業を行います。しかし、差圧式流量計については、特定の絞り構造と管口径範囲について国際的な規格があり、これに従って製作・設置すれば実流校正が不要です。
以上列挙した3つの特長の中で、最後の実流校正作業が不要である点は、この形式の最大の特長です。校正装置に対しては、流量が大きくなると多大な投資を必要とします。その点、旋盤作業と寸法検査だけで精度が保証される差圧式は、製造コストの面で非常に有利です。
4.差圧式の欠点
差圧式の理解を深めるため、この形式の弱点とされるポイントを挙げ、それが正当であるか否かを論じてみましょう。
1)流量範囲が狭い
自乗特性のため、測定できる最大最小流量比が3:1程度しかとれないといわれます。これは差圧伝送器の性能が向上した今日、状況が少し変わりました。一方、流量範囲はこの程度で十分という反論もできるのです。
差圧式流量計の測定範囲は、絞り機構の設計と差圧レンジの設定で自由に選べます。したがって、比較的狭い流量範囲でも、実際に使う範囲に合わせれば、実用上困ることはありません。使用流量域が当初の計画から変わる場合には、差圧伝送器のレンジ再調整かオリフィスプレートの交換で対応できます。
2)測定精度が低い
精度がフルスケールの2~3%であり、低いといわれています。また、実際の使用状態における精度が不明であるという人もいます。これは実流校正を省いているためであり、絞りと直管部を一体化し、実流校正を行えば、精度はずっと良くなります。
使用状態でいくらの精度が出ているかは、現場に校正装置を持ち込まない限り、どの形式の流量計でも証明できません。とくに高精度を要求されるパイプライン用流量計は、校正装置と組み合わされています。
3)導圧管が詰まりやすい
これは本当です。差圧式流量計のほとんどのトラブルは、差圧を差圧伝送器に導く導圧管に起因するといってよいでしょう。しかし、導圧管はダイヤフラムシールに置き換えることもできます(図3)。また近年差圧伝送器の改良によって、ゼロ点調整用の三岐弁の必要性が減り、差圧伝送器を配管に直接取付けるダイレクトマウント方式が増えました。この場合、導圧管部はきわめて短く、トラブルが減少します。
4)上下流に長い直管部が必要
これも事実ですが、渦式、超音波式、タービン式など、管内の流速分布の影響を受ける流量計に共通する問題です。流速分布の乱れがとくに大きい場合は、整流器を置くことにより上流側直管長を短縮できます。また、絞り機構にはオリフィスプレート以外にも様々なタイプ(筆者の「計装プラザ」参照)があり、たとえばベンチュリやVコーン(図4)では、必要直管長が大幅に短くなります。
5)圧損(圧力損失)が大きい
流れを絞るため圧損が大きいといわれていますが、圧損が問題になる場合は差圧レンジを低目に設定すればよいのです。また、前記のベンチュリやVコーンの場合は、構造上、オリフィスプレートより圧損が小さくて済みます。
5.まとめ
以上説明したように、差圧式はいわば万能流量計です。しかし、精度については、容積式やタービン式に見られる指示値の 0.2%にとてもかないません。圧損については、電磁式や超音波式の「まったくない」より劣るのは明らかです。古い形式と見られている差圧式の利点を今回強調したのは、流量計の特性を知ることの重要性をご理解いただきたかったからです。弱点も分かった上で、「私はできるだけこの形式の流量計を使うことにする」と決めるのは一つの見識です。見識がないと各社の宣伝に踊らされ、右往左往する結果になります。